○仙南地域広域行政事務組合火災調査規程
令和六年三月十日
消防訓令甲第一号
仙南地域広域行政事務組合火災調査規程(平成十七年消防訓令甲第一号)の全部を改正する。
(趣旨)
第一条 この訓令は、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号。以下「法」という。)第七章の規定に基づく火災の調査(以下「調査」という。)について必要な事項を定めるものとする。
(調査の目的)
第二条 調査は、火災の原因並びに火災及び消火のために受けた損害を明らかにして、将来の火災予防対策及び警防対策に必要な基礎資料を得ることを目的とする。
(用語の意義)
第三条 この規定における用語の意義は、火災報告取扱要領(平成六年四月二十一日消防災第百号消防庁長官通知。以下「要領」という。)の定めるところによる。
(火災の種別)
第四条 火災の種別は、次の各号のとおりとする。
一 建物火災 建物又はその収容物が焼損した火災
二 林野火災 森林、原野又は牧野が焼損した火災
三 車両火災 原動機によって運行することができる車両及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災
四 船舶火災 船舶又はその積載物が焼損した火災
五 航空機火災 航空機又はその積載物が焼損した火災
六 その他の火災 前各号に掲げる火災以外の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積場、軌道敷、電柱類等の火災)
2 前各号の火災が二以上複合する場合の火災の種別は、焼き損害額の大なるものの種別による。ただし、その態様により焼き損害額の大なるものの種別によることが社会通念上適当でないと認められるときは、この限りではない。
3 前項の焼き損害額が同額又は算出されない場合は、火元の火災の種別による。
4 爆発損害のみの火災種別は、前項の規定に準ずるものとする。
(調査の区分)
第五条 調査は、火災原因調査及び火災損害調査に区分する。
2 火災原因調査は、次の各号に掲げる事項を究明するために行うものとする。
一 出火前の状況 火災発生前の状況、機器等の使用の状況及び関係者の行動等
二 出火原因 出火箇所並びに発火源、経過及び着火物
三 延焼拡大の状況 延焼経路及び延焼拡大の要因
四 初期消火等の状況 火災の発見、通報及び初期消火の状況等
五 避難の状況 火災現場の避難者、要救助者の行動及び救出、救助の状況等
六 消防用設備等の状況 消防用設備等の設置及び活用の状況等
七 死傷者の状況 死傷者発生の原因等
八 前各号に掲げるもののほか必要な事項
3 火災損害調査は、次の各号に掲げる事項を明らかにするために行うものとする。
一 焼き損害 火災により焼けた物及び熱により破損した物等の損害
二 消火損害 消火活動によって受けた水損、破損、汚損等の損害
三 爆発損害 爆発現象の破壊作用により受けた焼き損害及び消火損害以外の損害
四 火災による死傷者 火災が直接の原因となって死亡し、又は負傷した者
五 その他前各号に掲げる以外の損害(消火のために要した経費、焼跡整理費、り災のための休業による損失等の間接的な損害を除く。)
(調査の責任)
第六条 消防署長(以下「署長」という。)は、管轄区域内で発生した火災について調査の責任を有する。
2 火災の延焼範囲が二以上の消防署の管轄区域にまたがる場合の調査は、管轄地域ごとにそれぞれの署長が行うものとする。
3 車両火災及び船舶火災の調査は、主として火災防ぎょをした場所を管轄する署長が行うものとする。
4 航空機火災の調査は、航空機が墜落し、又は着陸した場所を管轄する署長が行うものとする。
(調査体制の確立)
第七条 署長は、調査に必要な人員及び調査用器材を整備し、調査体制を確立しておかなければならない。
2 署長は、大規模な火災又は特殊な出火原因による火災で調査が困難と認める場合は、速やかに消防長に報告し、必要に応じて消防本部職員の派遣を要請することができる。
3 消防長は、前項の要請に必要があると認めた場合又は調査上必要があると認めた場合は、消防本部職員を派遣することができる。
(調査本部の設置)
第八条 消防長は、消防行政上特に必要があると認める火災については、調査本部を設置し調査することができる。この場合においては、第六条の規定にかかわらず消防長が調査の責任を有する。
2 前項の規定により調査本部を設置した場合は、調査本部に本部長を置き、その他調査本部の組織、編成等について必要な事項は、消防長が別に定める。
(調査本部の解散)
第九条 消防長は、前条の調査が完了したときは、調査本部を解散する。ただし、調査の状況により調査完了前であっても調査本部を解散することができる。
2 前項ただし書きの規定により調査本部が解散したときは、調査本部長から調査方針等の指示及び関係資料の引継ぎを受け、署長が継続して調査を行わなければならない。
(調査の実施)
第十条 署長は、管轄区域内に火災を覚知したときは、直ちに調査に着手しなければならない。
2 署長は、主任調査員及び調査員(以下これらを「調査員」という。)をあらかじめ指定して調査に従事させるものとする。
3 署長は、必要があると認めるときは、前項の調査員以外の職員を従事させることができる。
(派遣要請等)
第十一条 署長は、調査のため特に必要がある場合は、他の署長に対し、調査員の派遣並びに調査資器材等の貸与を要請することができる。
2 前項の要請を受けた署長は、調査に協力しなければならない。
(調査員の心得)
第十二条 調査員は、火災現象、関係法令等調査に必要な知識の習得及び調査技術の向上に努めるとともに、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 調査員相互の連絡を図り、調査業務の進行が円滑になるように努めること。
二 調査に際し関係者の民事的紛争に関与しないように努めるとともに、個人の自由と権利を不当に侵害せず、調査上知り得た秘密をみだりに他に漏らさないこと。
三 調査に関係のある場所へ立ち入るときは、原則として関係者の立会いを得ること。
四 警察機関、その他の関係機関とは密接な連絡をとり、相互に協力して調査を進めること。
(調査の原則)
第十三条 調査は、常に事実の究明を主眼とし、先入観念にとらわれることなく、科学的な方法による確認と合理的な判断の上に立ち、事実の立証に努めなければならない。
(火災現場の見分)
第十四条 消防隊員は、火災現場に出向いたときは、消火活動中における火煙の色、臭い、燃焼音、延焼経路、その他関係者の言動等を見聞したときは、現場指揮者及び調査員にこれらの状況を報告しなければならない。
2 調査員は、火災現場を見分し、火災の原因の判定に必要な資料の収集に努めなければならない。この場合においては、原則として関係者の立会いのもとに行うものとする。
3 火災状況の見分は、その内容を明確にするため、り災物件及び周囲の状況について写真による記録及び図面等を作成するよう努めなければならない。
4 調査員は、実況見分、関係者に対する質問等による事実等に基づき現場の復元を行うよう努めなければならない。
(消火活動中の現場保存)
第十五条 消防活動に従事する消防隊員は、出火箇所と認められる場所及びその付近の消火活動に当たっては細心の注意を払い、調査に支障のないよう現状の保存に努めなければならない。
2 現場指揮者及び調査員は、鎮火に際して出火箇所と認められる部分及びその付近の物件を、残火整理のため移動し、又は現状を変更する場合は、写真を撮影し、又は配置図等を作成するなどの方法を講じるよう消防隊員に必要な指示を行い、調査に支障のないように処置しなければならない。
(消火活動後の現場保存)
第十六条 署長は、消火活動を終了した場合において必要があると認めるときは、次の各号に定めるところにより、現場保存の処置を行わなければならない。ただし、警察によって現場保存が既になされているときは、この限りでない。
一 現場保存区域を設定し、関係者以外の者をみだりに立ち入らせないこと。この場合において、当該区域は、立入禁止テープその他の方法で表示すること。
二 現場保存区域には、必要に応じ監視人を置き、保存の万全を図ること。
三 その他現場保存上必要な措置を講ずること。
(死者等の取扱い)
第十七条 署長は、火災現場において焼死者、その他変死者を発見した場合は、速やかに消防長に報告するとともに、管轄の警察署長に通報し、必要な措置を講じなければならない。
(違反処理)
第十八条 調査員は、調査において消防関係法令等の違反又はその疑いがある事実を認めたときは、速やかに署長に報告しなければならない。
(調査記録)
第十九条 調査員は、調査結果を火災調査報告書により署長に報告しなければならない。この場合、次の各号に掲げる書類を添付するものとする。
一 火災調査書(様式第一号)
二 火災原因判定書(様式第二号)
三 火災原因判定書(二号処理)(様式第二号の二)
四 火災出動時における見分調査書(様式第三号)
五 実況(鑑識)見分調査書(様式第四号)
六 質問調査書(様式第五号)
七 防火管理等調査書(様式第六号)
八 死者の調査書(様式第七号)
九 負傷者の調査書(様式第八号)
十 損害調査書(様式第九号)
十一 その他火災の原因の判定、損害額の認定の根拠となった資料等
2 署長は、特異な火災を除き原因の究明が容易かつ損害額の軽微な火災であると認めるときは、調査員に対し簡略報告させることができる。
(火災調査書類の作成基準)
第二十条 火災調査書類の作成基準は、次に掲げる区分によるものとする。
一 一号処理 次のいずれかに該当する火災
イ 火元及び延焼建物の焼損床面積の合計が三十平方メートル以上の建物火災
ロ 火災による死者(三十日死者、放火自殺を除く)の発生した火災
ハ 焼損面積の合計が十ヘクタール以上の林野火災
ニ 社会に及ぼす影響が高いと考慮される火災
二 二号処理 次のいずれかに該当する火災
イ 焼損規模が軽微ではないが、焼損床面積の合計が三十平方メートルに至らず、更に、死者(三十日死者、放火自殺を除く)の発生がない火災
ロ 一号処理に該当しない火災
三 三号処理 火災原因が判明される火災で、次のいずれかに該当する火災
イ 焼損が「ぼや」又は同程度にとどまる規模の火災
ロ 損害額が計上されない火災
ハ 焼損面積の合計が十アール未満の林野火災
ニ 一号処理、二号処理に該当しない火災
2 前項各号に掲げる区分に該当する火災のうち署長が必要と認めた場合は、署長が判断する区分に従い作成することができる。
(原因の判定)
第二十一条 署長は、火災原因を判定する場合においては、火災の実況見分、質問、その他の関係資料等を総合的に検討して判定するものとし、物的調査及び人的調査による資料により裏付けるものとする。
2 判定に使用される用語の意味は、次のとおりとする。
一 判定とは、調査結果により全く疑う余地がなく極めて具体的、科学的にその原因が決定されるもの。
二 推定とは、調査結果によってはその原因を直接判定することはできないが、当該結果を基礎として、合理的にその原因が推測できるもの。
三 不明とは、調査結果によっても原因を判定する根拠が無く、又は若干の根拠があっても、合理的にその原因が推測できないもの。
(即報)
第二十二条 調査員は、鎮火後直ちに火災の状況について、その概況を消防長及び署長に報告しなければならない。
一 一号処理 火災覚知の日から起算して九十日以内
二 二号処理 火災覚知の日から起算して六十日以内
三 三号処理 火災覚知の日から起算して三十日以内
2 署長は、前項に定める報告期限内に報告することができない場合は、あらかじめ消防長に理由を付した文書をもって報告しなければならない。
(火災損害調査)
第二十四条 署長は、調査員に第五条第三項に規定する火災損害調査を実施させるとともに、り災物件を詳細に調査し、正確な損害の把握に努めなければならない。
2 署長は、法第三十四条第一項の規定に基づき、り災物件の関係者に対し、次の各号に掲げるり災申告書等により提出を求めるものとする。
一 り災申告書(不動産・動産用)(様式第十号)
二 り災申告書(林野・その他の物件用)(様式第十一号)
三 り災申告書(車両・船舶・航空機用)(様式第十二号)
四 り災物件明細表(様式第十三号)
3 調査員は、損害額の算定に当たっては、要領の算出基準により算出し、原則として損害査定表を用いるものとする。
(質問)
第二十六条 調査員は、法第三十二条第一項の規定により火災の発見者、通報者、初期消火者及び火元者、その他の関係のある者に対し質問を行い、資料の提出を求め、事実の確認に努めなければならない。
2 調査員は、質問を行うときは、強制的手段を避け、その場所及び時間等を考慮して、被質問者の任意の申述を得るよう努めなければならない。
3 調査員は、質問を行うときは自己が期待し又は希望する申述を被質問者に暗示するなどの方法により、みだりにその申述を誘導してはならない。
2 調査員は、前項の質問調査書を作成した場合は、被質問者に読み聞かせ、又は閲覧させて記載事項に誤りのないことを確認し、その日時と確認方法を記載するものとする。なお、同人が質問調査書の内容について、不服の申し立てをしたときは、その申述した内容を質問調査書に記載しておかなければならない。
(未成年者等に対する質問)
第二十八条 調査員は、未成年者(十八歳未満の者をいう。)及び身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第四条に規定する身体障害者又は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第五条に規定する精神障害者等が関係する火災で、第二十六条に規定する質問を行い、又は実況見分の質問を行う場合は、立会人をおいて行うものとする。ただし、立会人をおくことで、真実の申述が得られないと判断されるときは、この限りでない。
(被疑者に対する質問等)
第二十九条 署長は、火災調査のため必要があると認めるときは、法第三十五条の二第一項の規定に基づき、警察機関に留置されている放火又は失火の犯罪の被疑者に対する質問及び押収された証拠物件の調査をするときは、質問(証拠物件調査)要請書(様式第十四号)により要請することができる。なお、被疑者に対する質問及び押収物件の調査については、被疑者が逮捕され、証拠物件を押収してから事件が検察官に送致される間に限られる。
2 直接被疑者に対して質問することができない場合は、事件を担当する警察官を介して被疑者の供述内容を聴取し、供述内容調査書(様式第十四号の二)に記載するものとする。
(官公署への照会)
第三十条 署長は、必要があると認めるときは、法第三十二条第二項の規定に基づき、関係のある官公署に対し、火災調査関係事項照会書(様式第十五号)により必要な事項の通報を求め、又は照会することができる。
(照会等の対応)
第三十一条 消防長は、官公署等から調査事項について照会を受けたときは、その内容、目的及び理由を審査し、必要な事項について回答することができる。
(資料の提出及び保管)
第三十二条 署長は、調査のために必要があると認めるときは、関係者並びに製品の製造者及び輸入者に対し、資料の任意提出を求めることができる。
2 署長は、調査のため特に必要と認めるときは、法第三十二条第一項及び第三十四条第一項の規定に基づき、関係のある者又は火災原因の疑いがあると認められる製品を製造し、若しくは輸入した者に対し、資料提出命令書(様式第十六号)により資料の提出を命じ、又は報告を求めることができる。
3 署長は、資料の提出があった場合は、提出者に対し資料提出承諾書(様式第十七号)を交付しなければならない。
5 署長は、調査が完了した後において提出者が当該資料の返還を求めたときは、資料提出承諾書と引換えに当該資料を返還しなければならない。
6 資料の提出者が資料の所有権を放棄したときは、調査完了後、適切に処分しなければならない。
(鑑定の依頼)
第三十三条 署長は、火災原因調査に必要があると認めるときは、調査関係機関その他学識経験のある者に対し、鑑定依頼書(様式第十九号)により資料の鑑定を依頼することができる。
(大規模災害時の調査)
第三十五条 消防長は、地震等その他の異常な自然現象による大規模災害時に発生した火災の調査に対し、組織的な執行体制の確立に努めるものとする。
2 消防長は、大規模災害発生直後から災害活動がおおむね収束するまでは、災害状況の記録及び調査のため情報収集等を主眼に行い、災害活動収束後は、り災証明書発行のため損害調査を優先してり災証明事務の対応に努めるものとする。
3 消防長は、災害活動収束後に火災状況を勘案し、期間及び地域を限定して、「大規模災害に伴う火災」に指定することができる。
4 大規模災害に伴う火災調査においては、第十九条に定める調査書類の一部又は内容を省略して作成できるものとし、省略できる調査書類又は内容については消防長が別に定める。
(一般教育)
第三十六条 署長は、職員の火災調査に関する知識及び技術の向上を図るため、定期的に火災調査に係わる講習等を実施しなければならない。
(委任)
第三十七条 この訓令の施行に関し必要な事項は、消防長が別に定める。
附則
(施行期日等)
1 この訓令は、令和七年四月一日から施行する。
(経過措置)
2 この訓令の施行の日前にされた手続及びその他の行為は、改正後の訓令によりされた手続及びその他の行為とみなす。
3 この訓令の施行の際、この訓令による改正前の様式で、現に残存するものは、所要の訂正を加え、なお使用することができる。
































